ヴァッティモ『透明なる社会』 違和感の美学

『透明なる社会』を読む。透明なる社会 (イタリア現代思想)posted with amazlet at 14.02.17ジャンニ・ヴァッティモ 平凡社 売り上げランキング: 526,867Amazon.co.jpで詳細を見る本書の中心はメディア論、コミュニケーション論、芸術論である。ヴァッティモ…

「我々は後ずさりしながら未来に入っていくのです……」ヴァレリー『精神の危機』など。

課題、ポール・ヴァレリーの『精神の危機 他十五篇』を読み、感想を書くこと。精神の危機 他15篇 (岩波文庫)posted with amazlet at 14.02.15ポール・ヴァレリー 岩波書店 売り上げランキング: 221,589Amazon.co.jpで詳細を見る 危機の時代 危機というのは近…

知られざる石川淳──渡辺喜一郎『石川淳傳説』を読んで

石川淳という作家を考えようとすると、私はとたんに戸惑ってしまう。いったい彼の何を論じればいいというのか。その困難さの一つには作家の明晰さがある。たとえば、評論『森鴎外』は一見した所、江戸っ子の歯切れの良さで、ほとんど独断的に、そして破れか…

デリダの『精神について』ちょこっと。

誰かが「精神」ということばはespritの適切な訳語ではない(というか、適切な訳語なんてないのでしょうけど)と仰って、どう訳すのがより心地よいか、と問うていた。精神には神がいる。神という字は、しめすへんと、申=カミナリの合成。しかし精という字も…

読書会。『ランボー 自画像の詩学』

実はちょっと消沈している。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platform.twitter…

お金とはどんなものかしら(2)―『貨幣とは何だろうか』

貨幣とは何だろうか (ちくま新書)posted with amazlet at 13.03.02今村 仁司 筑摩書房 売り上げランキング: 44,778Amazon.co.jpで詳細を見るまず、かなり長い引用をしたい(別に読む必要はない)。 貨幣と言語の関係はしばしば論じられてきた。この種の議論…

読書会。ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で』のワークショップの前で

昼寝から突如驚いて目覚めたパーンのように、 人間は、普遍者(Allheit)としての自然の姿に気づいて愕然とする。 かつてのパーンの驚きに対応しているのは、 今日いついかなる瞬間に突発するかもしれないパニックなのだ。 人間は、彼ら自身でありつつも彼らの…

お金とはどんなものかしら―『言語の金使い 文学と経済学におけるリアリズムの解体』

まずは歴史の勉強。たとえば塩野七生が『ローマ人の物語』文庫版で、毎巻ごとの表紙に統治者のレリーフを刻印した貨幣を飾っていたように、貨幣の存在は古くから統治行為の中枢にあった。その貨幣の届くかぎりがローマの統治の及ぶところであり、その硬貨の…

読書会。『いま、なぜゾラか』

2007年に『ジェイン・オースティンの読書会』が公開されたことが決定打になったのか、「読書会の流行」は実質以上にマスコミでもてはやされるようになっている。『読書会』の邦訳を刊行した白水社が「読書会ノススメ」という特集を組んだときは、白ワインが…

アドルノ/ホルクハイマー『啓蒙の弁証法』と『オデュッセイア』

「オデュッセイア的転回」の後半で、ごくあっさりと『啓蒙の弁証法』に触れた。 アドルノ/ホルクハイマーはまた『啓蒙の弁証法』でセイレン譚を取り上げ、オデュッセウスを「自己保存的理性」(岩波文庫、132頁)と呼んでいる。 せっかくだから触れておいた方…

オデュッセイア的転回

『イリアス』における運命論的思考 先のエントリでは、『イリアス』に機能している支配的なイデオロギーが「運命」であり、それが戦場においては、死を定められたものとして潔く受け入れる態度として具体化されていることを確認した。その末尾で予告しておい…

忘却の余滴 『HIROSHIMA1958』と『愛の小さな歴史』

前回のエントリではアラン・レネ監督、マルグリット・デュラス脚本の映画『二十四時間の情事』(原題:Hiroshima Mon Amour)について書いた。1959年6月に公開された映画の撮影のためにアラン・レネが日本を訪れたのはその前の年、1958年7月のこと*1。原爆の投…

『二十四時間の情事Hiroshima mon amour』と朝が来るまで終わる事の無いダンスを。

夢遊病的な描写が目立つことに気付かれるのではないか。 この映画は「夢」を描いた映画、ヒロシマは彼女の夢の舞台、そのような前提でもって話を始めてみたい。 ここで「夢」というとき、その特徴として私が考えているのは、諸事物の厳密な境界の揺らぎと、…

『イリアス』における運命論的思考

今回は『イリアス』における世界観、特に「運命」についての考え方について書く。はじめに叙事詩というジャンル及び世界についての後世の評価に触れ、それを批判的に検討する。それから『イリアス』における具体的描写を引用しながら、そこで「運命」が如何…

『イリアス』を読むために

イリアス〈上〉 (岩波文庫)作者: ホメロス,Homeros,松平千秋出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1992/09/16メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 53回この商品を含むブログ (56件) を見るイリアス〈下〉 (岩波文庫)作者: ホメロス,Homeros,松平千秋出版社/メー…